『魔法少女リリカルなのは Detonation 』 感想
―誰のための力? なんのための魔法?
リリカルなのは劇場版2部作の後編、リリカルなのはデトネーションの感想です。
前編の終わりからして、後編はあと20分くらいのバトルでエピローグに入ってしまうのでは?
とかいう状態だったので。正直特別に期待はしていなかったんですが、これは……
現在なのはファンの人、昔なのはファンだった人、なのはシリーズはまだ追ってるけどここ数年のシリーズ展開の在り方にもんにょりしてた人、全ての人が楽しめるであろう素晴らしい作品となっておりました。
シナリオ【A】
バトルが常にクライマックス級、そして明かされいく真相。
映画の宣伝みたいな文句だけど、本当にこんな感じなんですよね~。
前編で一見バラバラの要素のように思えていた事がどんどん繋がっていく気持ちよさ。
今回はなのはシリーズの中でも、特にメッセージ性をストレートに伝えてくる作風のように思います。
過去作ですごく印象的だったフレーズとかも使われて、これをなのはシリーズの完結編にでもするつもりかと不安に思ってしまうほど。
破滅に向かう人達を救う為に心身を削って戦ってきたなのは。
今作では多くのキャラがそれぞれに助けたいもの、守りたいものの為に戦う中で、
シリーズを通して正義と救済の権能その物になっていたなのはが自身の気持ちと初めて向き合い、一つの答えを得る。
バトルシーン【A】
魔法発動にワンアクション入れてから技を撃っていた時代に恋しさを感じなくもないですが、飛び回りながら流れるように攻撃を乱射するバトルも派手で見応えがあります。
そしてまさかの、なのはでレイティングPG12
前作の時から戦いで中高生が小学生の顔思いっきりぶん殴ったりとかしてたけど、
今回はそれ以上のゴア表現も多数だからまぁ……
とはいえ、一人でなのはを見に来る小学生が居るとも思えませんがね。
強いていえば、スターライトブレイカーが未使用で終わった事だけが心残り。
衛星砲破壊なんてまさにスターライトブレイカー向きのミッションなのに!
極大の魔力砲で衛星消し炭とかベタだけど絵になるでしょう!
アクションが激しいのもあって髪のはためきがすごく映えます。
特になのはとイリス
クライマックスシーン【S】
シリーズを通して描かれてきた、病的なまでに他人を助ける事に固執するなのはが遂に自身と向き合う。
なのはの過去や行動として断片的に描写されて来た部分だったけど、なのは自身の言葉として本心が語られたのは初めてですかね。
過去大切な家族が苦しんでいる時、幼くて力になることができなかった事に苦しみ、以降人を助ける事に心血を注いできたなのは。
その時の無力な自分が嫌だから、人を助ける力になれない弱い自分は嫌い。
強大な魔法の力を得て、できることは格段に増えて、それでもまだ救えない存在があって、その度に自身を戒めてきた。
こういう部分が心に響くのは、生きてれば大なり小なりそういう経験が普遍的な事だからですよね。
自分の力では及ばない事があって、無力感に打ちひしがれたり、次の時はもっとうまくやってみせるっていう再戦への決意であったり。
それを自罰的に肥大化させてしまったのがなのはという存在。
この辺りの発端とかはユーリの力になりたかったディアーチェ達とも似ているけど、なのはの場合は救うという行為そのものが目的になっているから献身対象が無差別に世界全てで、
衛生砲護衛機との戦闘で地球を背に守るように立ち向かうカットで印象的に表現されてたなぁと。
正史?ではそれが遂に満たされる事は無く、撃墜されて重傷を負っても変わらない変えられない、痛々しくも高潔な高町なのはの生き様として描かれていったわけですが、
この世界線のなのはは、たぶん少しだけ、そこにブレーキを掛けることもできるようになるのかな。
なのはシリーズと出会って十年以上。
なのはの力強い輝きに魅せられて、ずっと自分の中で模範としての高町なのはがあって、今の自分があります。
立ちはだかる全てを撃ち倒していく姿に憧れを持ちつつ、
その中で時々描かれるようになったなのはの苦しみ。
友達が増えても、多くの人を救っても、心の隙間を埋められない、飢えを抑えられない姿が見ていて自分も少し辛かった。
だから、なのはがそこにどう決着をつけるのか、目が離せなかった。
それを今回、遂に見せてもらえた事が嬉しかった。
そこが今作一番感激したポイントだし、なんかすごく安心したんですよね。
創作物のキャラだけど、なのはは恩人みたいな感覚だったから、その未来が少しでも安全な方向へ軌道修正される可能性が示された時、とてもほっとしたんです。
総評【A+】
前編Reflectionは「悪くないけど……」止まりでしたが、考えてみれば前編後編で別れているのだから当たり前でした。
堂々たる『久しぶりのなのは本編(はやての中の人的表現)』として申し分ない出来。
2ndから随分時間が経ってしまったけどなのはのエッセンスは全く損なわれておらず、これぞまさにリリカルなのはだ! と実感できる作品でした。
もっと続編が見たい。
でももし。仮に今回でなのはのアニメシリーズが最後になってしまったとしても、
悲しむし残念に思うけど、自分の中で満足して納得する事もできるかな、と
そういう区切りにもできるかもしれないと思える作品でした。
なのはファンはコレを見れば成仏できる。